覚悟はしてたけど夏が来てしまった
一番ニガテな季節がやってきてしまった。
背中と後頭部が暑くて眠れない。
アイスノンピローやひんやりシートで工夫しても、
だるさを伴ってなかなか眠れない。
ちょうど5時に何度目かのトイレに起きた時、
よし!散歩に行こう、と決めた。7月になってはじめての散歩だ。
カーテンを開けるともう朝だ。
愛犬はすでに朝の散歩のために夫が起きるのを待ってスタンバっていた。
陽は東から昇るってことを今更確認する。
私のいつもの散歩は夕方だから太陽の位置が逆だ。ああ、いま朝なんだな、と笑う。
一輪だけ残っていた。
ここに居ますよと香りも強く主張している。
これ。
何の木だろう?
高くて大きな木にピンクの刷毛のような花が沢山ついている。
まるで桜の花びらが散ったかのように地面がピンク色に染まっている。
夫と坊の後を追いながら考えていた。
あとどのくらいこの景色をみることができるだろうか。
11歳の愛犬とあと幾つの夏を一緒に越えられるだろうか。
職を失って4ヶ月。僅かな貯蓄を切り崩して生活しているけどそう長くはもたないことも知っている。とりあえず今わたしに出来る事は支出を抑えるために節約することくらいで、
代わりに働く(働ける)という選択肢が無いのが悲しい。
1年経った時、
この景色を一緒にみることができるだろうか。
形は変わったとしても、同じような気持ちで「今が一日でも長く続くといいな」と思いながら暮らせないものだろうか。
前を歩く夫の赤いシャツがふわふわと風で膨らんで揺れている。
この人は柳の木のような人だな、と思った。
スケールのでかい大木のような人でもなく、
これは規格外なので木として分類できませんな、という実弟のような珍種でもなく、
風に流され細い枝が揺れて一見頼りなさ気で、でも芯の強さを持っている柳の木だ。
職を失ったことで今でもこれから先どうなるのか不安しかないというけれど、
同時にお金が自由に使えなくなったことで本当に必要なものが見えてきた、とも話している。
私も食費が二人2万にならなかったら、自分でどら焼きや饅頭を作ろうなんて考えなかっただろう。買ったほうが安いし、なんて今も言っていたんだろうな。
一年後の夏、二人と一匹はどんな景色を見て過ごしているだろうか。
成るようにしか成らない。だから、
不安な気持ちはとりあえず今は置いておいて、日々淡々と生きていこうか。
笑いながら。